人物情報
1818年~1883年
ドイツプロイセン王国のトリーアで潤沢な資産を有する家に生まれた。
フリードリヒ・エンゲルスの支援を受け、共同で『共産党宣言』を出版している。
マルクスとエンゲルスは自分たちを、科学的社会主義と自称した。
社会科学に大きな影響を与えた。マルクス経済学やマルクス主義法学といった分野が生まれた。
マルクスの思想=マルクス主義ではない。マルクス主義は、マルクスの思想に、それを解釈した人の思想も混ぜている。
レーニンによるロシア革命が起き、世界初の社会主義国家であるソ連が誕生する。マルクス主義の主流派、マルクス=レーニン主義となる。
主著
『資本論』:空想社会主義、古典派経済学、ドイツ観念論などが合流した壮大な経済学・哲学の著書。資本主義においては富は商品を通じて作られているので、商品を分析している。『資本論』の目的は以下の2つである。
- 資本主義が労働者を搾取する構造であることを暴露すること。
- 資本主義社会は我々を包摂していることを指摘すること。
『共産党宣言』:マルクスとエンゲルスの共著。
基本知識
マルクスの人間観
マルクスは人間を「労働によって自己実現する存在」と定義した。
また、社会との関わりの中で生きる存在として類的存在とも呼んだ。
人間疎外
労働によって自己実現できない状態を人間疎外と呼んだ。
狩りの時代において、労働=人生であった。労働とは人間本来の活動であり、人間の本質であり、生きるための素晴らしい行動であったが、資本主義によって意味が大きく変わった。
資本主義によって、本来労働によって手にするはずのものが資本家のものになり労働者には手に入らなくなってしまい、労働とセットになっていた人間らしさは消失し、人間は取り換え可能な商品として扱われるようになった(このことを実質的包摂という)。
労働者は生きていくためには、自分を労働力という商品として売り込まなければならず、自分の労働力の価値を上げるための努力をしなければならない。
やがて、この努力は自発的なものとなり、主体的に行動していると確信していても、それは資本家によって方向づけられた行動となっている。
結果、私たちの生活や精神までもが資本主義のシステムに支配されていくことになる。
これが資本主義の欠陥であるとマルクスは言う。
労働力の商品化
資本家とは、生産手段を持つ階級のこと。生産手段とは、土地・生産設備・資本金など生産に必要な手段のこと。
労働者は生産手段を持たないため、資本家にやとわれて働く。このことを労働力の商品化という。
労働者の賃金は、明日も同じように元気に働く(労働力を再生産する)ために必要なお金となる。そして、労働者がそれ以上の価値(剰余価値)を生み出せば、それが資本家の利益となる。
労働時間で言えば、労働者は、自分の賃金分の価値を生み出す労働時間(必要労働時間)と、資本家のための剰余価値を生み出す労働時間(剰余労働時間)の労働をしていることになる。
資本家は、生産性の向上などで必要労働時間を減らし、剰余労働時間を増やすことによって、自らの利益を増大させていくが、労働者が得られる賃金は、労働力を再生産するのに必要な分であることに変わりはない。
これが資本主義の搾取の構造である。
唯物史観(史的唯物論)
唯物論:この世は全て物質でできている。心や精神でさえも物質によってできている。物質が実体であり、精神は物質の活動形態に過ぎないとする。
マルクスの唯物史観は、歴史を物質の弁証法によって発展してきたとする考え方である。物質や、物質を根底にした事柄どうしが対立し、それが止揚されることによって、世の中は発展してきたとする。
マルクスは、社会が上部構造と下部構造によって成り立っていると考えた。
- 上部構造:政治や文化、思想や芸術などのこと。
- 下部構造:生産力と生産関係(経済的関係を含む社会制度のこと)
上部構造は下部構造によって規定されている。つまり、人間の理性的な意識や自由意志も、結局は、そのときの経済に規定されている。
生産関係はいったん成立すると固定化するが、生産力は絶え間なく発展する。すると、下部構造内で矛盾が発生し、上部構造が変革されるとした。
革命による資本主義の崩壊
原始共産制→古代奴隷制→中世封建制→近代資本主義→共産主義
このように、人間の歴史は経済構造が形を変えて前進していく。
人間の歴史は階級闘争の歴史である。
原始共産制では階級闘争はなかったが、古代奴隷制社会では奴隷主と奴隷の階級闘争があり、中世封建制では領主と濃度という階級闘争が発生した。
そして、近代資本主義社会では資本家と労働者という階級闘争が起こっている。生産手段の偏りが階級差につながっている。
時がたつにつれて生産力は向上するが、生産関係は固定される関係にあるため、矛盾や格差が表面化する。そして、いつか労働者が団結して資本家を倒し(社会主義革命)、社会主義国家が建設されると主張した。これにより階級闘争は終わる。
社会主義国家は生産手段の私有が禁止され、資本家階級がいない、労働者による国家である。生産手段は交友され、国営企業が生産の場となる。
そして、最終的に共産主義へと至ると考えた。
- 社会主義:生産手段を国家が一元的に管理する。国による計画的な平等。
- 共産主義:生産手段の共有、財産の共有、真の平等の実現。
名言
「空想的社会主義は具体的な実現方法や、維持方法を提示していない、未熟な理論である」
「資本主義的生産様式の支配的である社会の富は、『巨大なる商品集積』として現れ、個々の商品はこの富の成素形態として現れる。したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる」
「これまでの社会のすべての歴史は階級闘争の歴史である」
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