人物情報
1921年~2002年
アメリカのメリーランド州に生まれる。
新しい政治理論が現れず停滞していた政治哲学に大きな影響を与えた。1971年刊行の『正義論』以降の政治哲学を「ロールズ・インダストリー」と呼ぶこともある。
主著
『正義論』:正義とは何であるかを考察した。
基本知識
功利主義の否定
英米の人々は、功利主義の「最大多数の最大幸福」を正義だと考えることが多かったが、功利主義の幸福は、少数の人々を差別することによって多数の人々が幸福であってもよいことになりかねない。
また、それぞれの個人はそれぞれの利害、道徳観、宗教的信条、社会的地位を持っている。このような状況においてなされた契約(法律や憲法)は、それ自体が道徳になることはありえない。
無知のヴェール
原初状態(自然状態)において社会契約を結ぼうとしても、そこには必ずそれぞれの個人の意図が含まれてしまう。また、多くは権力者や力を持つものの有利な契約が結ばれる。
そこで「無知のヴェール」をかぶった状態で社会契約を結ぶべきである。
- 無知のヴェール:かぶると、各人が自分の社会状態や地位を忘れた状態になる。
この状態であれば、そこで同意された原則は平等と正義にかなうものなはずである。
※「無知のヴェール」をかぶった状態であれば、自分が弱者側になる可能性があるので、弱者に配慮した契約を結ぶことになる。
公正(フェアネス)としての正義
原初状態で「無知のヴェール」をかぶった状態で結ばれた社会契約は、
- 基本的自由:社会のすべての成員が基本的自由への権利を持つべきである。
- 格差原理:社会における不平等は、それが弱者の利益になる場合(最も不利な立場にある人々の福祉最大化)にのみ許される。
この2つの原理が選ばれる。これを「公正(フェアネス)としての正義」という。
アファーマティブ=アクション
最も不利な立場にある人々に優先枠を設けることは、社会全体の幸福増進につながる差別だと考え、アファーマティブ=アクションを進める考えを唱えた。
- アファーマティブ=アクション(積極的差別是正措置):ポジティブ=アクションとも言う。黒人や女性、少数民族などの社会的に不利な立場にある人々に優先枠を設けようとする運動。
名言
「正義とは何かを考えるためには、平等の原初状態において、人々がどのような原理に同意するのかを問う必要がある」
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