人物情報
1908年~2009年
ベルギーのブリュッセルに生まれる。
構造主義の祖であり、実存主義(サルトルなど)の勢いを止めた。
- 構造主義:自由な意志によって思考・行動していると思っている人間が、実は一定の枠組み(構造)に規制されていると主張する立場。
ソシュール的な認識の転回に大きな影響を受けた。
構造主義は、今なおその影響が残っている。
主著
『野生の思考』:未開社会の思考である「野生の思考」は象徴的で、近代西洋社会の「文明の思考」は抽象的で科学的だが、ともに同じ構造のもとに規制されているとした。
基本知識
野生の思考
レヴィ=ストロースは南米に住む「未開人」を研究していた。
西洋の進化は設計図のある進化である。歴史を通して、ある地点にむかって合理的、論理的に進んでいくことをよしとする(文明の思考、科学的思考)。結果として、戦争や環境破壊が起きた。
未開人の生活には設計図ない。その場のありあわせの材料を使い、それによってただ生きている。
西洋文明はこれを「遅れている」とするが、民族単位で考えると、合理的で論理的な生活である(野生の思考)。結果として、大きな戦争や環境破壊などは起きない。
ソシュール的認識の転回
ソシュールは、言語が集まって世界を構成しているのではなく、全体という構造が先にあって、その中で対立や差異が発生することでそれぞれの言語が生まれていると主張した。
同様に、個人が集まって社会が構成されているのではなく、社会・文化という構造が先にあって、その中の対立や差異により個人が成立している。
つまり、未開社会も西洋近代社会も、根底では同じ構造を前提にしており、異なる論理を持っていると考えることができる。
エスノセントリズム(自民族中心主義)の批判
未開社会にも文明社会の科学的思考に劣らない論理がある。
サルトルは「人間は歴史に投げ込まれた自由な存在である」と言ったが、その「歴史」は西洋文明の歴史を指している偏見である。「人間によって歴史がより良い方向に進む」という主張は西洋的な価値観の押し付けである。
未開人の文化は、西洋的な技術や科学の発展のある一段階ではない。「西洋が歴史の先端であり、未開社会は遅れている」という考えは傲慢であり、エスノセントリズム(自民族中心主義)である。
未開人の思考は西洋の科学的思考とは別の体系をとっているだけで、同じ構造の下で変化しているだけである。
近親婚の禁止(インセストタブー)
西洋文明は、科学的理由から近親婚を禁忌としている。
南米の未開社会には、女性交換(部族間で女性が嫁ぎ合う)という文化がある。その目的は、他部族とのコミュニケーションを図り、両者の平和を担保するためであった。結果として近親婚の回避につながっている。つまり、野生の思考によって近親婚を禁忌としていると言える。
このように、西洋文明と未開社会には、根底にある共通項を見いだせることがある。
したがって、同一社会の過去と今を比較する(歴史を研究する)のではなく、現時点でのそれぞれの社会や文化の差異や対立を研究することによって、人類共通の構造を見出すことができると構造主義者は主張する。
名言
「私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。だから私たちは自分が思っているほど、自由に、あるいは、主体的にものを見ているわけではない。(中略)私たちは自分では判断や行動の『自律的な主体』であると信じているけれども、実は、その自由や自律性はかなり限定的なものである、という事実を徹底的に掘り下げたことが構造主義という方法の功績なのです」by内田樹『寝ながら学べる構造主義』
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